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Yale Covid Stimulus Translation

Neural machine translation plus human refinements by Jungo Kasai, Koji Shiono, and Noriyuki Kojima.

本文はイェール大学経営大学院による「消費か貯蓄か?」(原題:To Spend or to Save?)を、翻訳したものであり、著者の意見、主張を反映するものではないことをここに明記します。また、いくつかの情報は現状を反映していない可能性があります。最新の発表、及びお住まいの地方自治体のガイドラインもご参照ください。

消費か貯蓄か?

行動科学で、経済刺激策の小切手に関する消費者の意思決定を説明する。

背景

2020年3月27日、COVID-19が米国経済に大混乱をもたらし続けている中、トランプ大統領は、米国史上最大の景気刺激策と考えられる法律に署名した。1 このパッケージでは、幅広いイニシアチブの支出を承認することに加え、大多数のアメリカ人に1,200ドルの一時金を支給する。2 受給資格や給付額は所得や家族の状況によって異なるが、米国の多くの成人はまもなく小切手を受け取ることになるだろう。ここで、景気刺激策の効果を判断する上で重要な疑問が一つ残っている。アメリカ人はこの小切手をどう使うのだろうか?

なぜ現金を配るのか

個人消費は米国経済の重要な要であり、米国国内総生産の約70%を占めている。3 COVIDの不安が深刻になるにつれ、消費者の消費意欲が急落しているというデータがある。 また、多くのアメリカ人が基本的な支出を補う方法を見つけようとしているため、個人消費の裁量支出が減少している。4 データによると、アメリカのほとんどの家庭では、金融ショックを乗り切るための準備が十分にできていない。ピュー慈善信託によると、41%の家庭が2,000ドルの経費を賄うための資金が不足しているという。 5 政府は、日常生活者に現金を渡すことで、消費者がお金を使って商品やサービスを購入し、経済のエンジンに燃料を供給することを期待している。

伝統的な経済学は、個人が支出と貯蓄について合理的で情報に基づいた意思決定を行うことを前提としている。景気刺激策の支払いを受けた後、個人個人は将来の収入の合理的な予想と将来的にそれらの資金を必要とする可能性がどれほど高いかに応じて、支出または貯蓄をするだろうということだ。6

しかし、行動科学が示唆することによると、物事はここまで単純ではない。メンタルアカウンティングとフレーミング効果という2つの有名な行動概念が、消費者が小切手を利用するかどうかを決める際に特に重要な役割を果たす可能性がある。

行動科学的知見

伝統的な経済学では、個人の富の変化は、財源に関係なく、同じように扱われることを示唆しているが、行動科学では、メンタルアカウンティングが支出や貯蓄周りの消費者の意思決定に重要な役割を果たしていると考える。多くのビジネスがその収入と支出を管理するように、消費者は様々な 「予算 」や 「勘定項目、口座」に割り当てて、収入と支出を追跡するために精神的な会計システム、メンタルアカウンティングを行うことになる。7

例えば、消費者は予期せぬ収入を得た場合、その資金を「棚ぼた」項目に振り分け、余剰金として処理して支出することがある。消費者が勘定科目に振り分ける際には、収入源も考慮することになる。 スポーツベットからの棚ぼた収入は、軽薄なものとみなされ、軽率に使われることがあるが、税額控除からの収入は、「誠実、真面目なもの」とみなされ、貯蓄されたり、請求書の支払いやその他の 「真面目な 」項目に割り当てられたりすることがある。1

言い換えれば、消費者が景気刺激策の支払いを「通常の」収入とは別のものと見ている範囲では、それを使う可能性が高いかもしれない。このことは、支払いがどのように受け取られるかによっても変わるだろう。「もし振り込みではなく、小切手で受け取るのであれば、消費者の頭の中ではその二つは別である可能性が高く、貯蓄されるだけの収入ではなく、使われるための棚ぼた的な収入として扱われる可能性が高い。」とネイサン・ノヴェムスキー教授は示唆している。

最後に、資金の出所に関連した感情が影響を与える可能性がある。「メンタルアカウンティング、感情の会計」が示唆することによると、 消費者は、ネガティブな財源に関連づけられる拾い物的なお金を快楽的には使用せず、その代わりにネガティブな感情を相殺するために、美徳的な、あるいは理に適った使い方をする。8 例えば、愛する家族の不慮の死によって相続したお金は、ネガティブな要素に結びついて、軽薄なものや耽溺的なものではなく、徳のあるものに使われることがある。

では、消費者はどのように今月受け取る景気刺激策の小切手を解釈するのであろうか?個人はすぐに消費に目を向けるのか?ウイルスに関連するネガティブな感情や消費者の経済見通しへの影響は、消費者の購買意欲をそぐことになるのか?消費者は、危機によって苦境に立たされたと思われる地元企業にお金を使うのか、それとも経済的な将来への不安から貯蓄しておくのだろうか?

その問いへの答えは、小切手のフレーミング、枠組みにあるかもしれない。行動科学によると、現金を通常の所得を超えた、不労所得やボーナスとして認識することで、支出に拍車がかがる可能性がある。一方で、現金をキャッシュバックや(部分的な)パンデミック前の状態への回復への一途として認識される場合、貯蓄を促すことになる。2001年の景気刺激策を調査した研究では、刺激策の現金を「キャッシュバック」ではなく「ボーナス」という枠組みにすることで、実験の結果と同様に実際刺激策の支出を増加させることがわかった。9 回答者は、キャッシュバックとして25ドルを提示した場合、2.43ドル支出したのに対し、ボーナスとして25ドルを提示した場合、11.16ドルを消費した。最近の調査によると、高校三年生の場合、条件が金銭的に同等であるにもかかわらず、「ローン」より「所得分配契約」を選択する可能性が11~12%ポイント高かったことから、中小企業の景気刺激策の効果も、支払いをどのような枠組みで提供するのかに大きく依存した可能性があることが示された。10

結論

米国経済への景気刺激策の支出の最終的な影響は、初期段階の推測にすぎないが、行動科学は、メンタルアカウンティングとフレーミングが特に重要な役割を果たす可能性があることを示唆している。 小切手で促しているのは、米国の「成長」なのか「回復」なのかどちらに位置付けるかによって、アメリカ人がこの新たな収入をどの項目に振り分けるかに影響が出て、実際の支払い額そのものよりも支出の決定を左右する可能性がある。 ある人は、基本支出を補い、請求書を支払うことに重点を置くかもしれないが、多くの人にとっては、支出や貯蓄の決定は、経済学の問題というよりも、フレーミング、枠組み、位置付けの問題になる可能性が高い。

参考文献、注釈

  1. Pramuk, J. (2019). Trump signs $2 trillion coronavirus relief bill as the US tries to prevent economic devastation. CNBC.  2

  2. 一人当たり最大1,200ドルの救済措置は、昨年の年収が9万9,000ドル以下の人、または夫婦の場合は19万8,000ドル、そして13万6,500ドルまで稼いでいる独身の親の場合においては、すべての人に適用されます。また対象となる親は、子供一人につき500ドルが支給される。 

  3. Bureau of Economic Analysis. “Concepts and Methods of the U.S. National Income and Product Accounts: Table 1.1.6. Real GDP 

  4. The Economist. How the covid-19 pandemic is changing Americans’ spending habits. 

  5. Carrns, A. (2019). Even in Strong Economy, Most Families Don’t Have Enough Emergency Savings. The New York Times. 

  6. Friedman, M. (1957). The Permanent Income Hypothesis. Princeton University Press. 

  7. Thaler, R. (1999). Mental accounting matters. Behavioral Decision Making. 

  8. Levav, J. & McGraw, P. (2018). Emotional Accounting: How Feelings about Money Influence Consumer Choice. Journal of Marketing Research 

  9. Epley, N, Mak, D. & Idson, L. (2006). Bonus or rebate? : the impact of income framing on spending and saving. Behavioral Decision Making 

  10. Evans et al. (2018). Framing and Labeling Effects in Preferences for Borrowing for College: An Experimental Analysis. Research in Higher Education. 60:438–457